コンピュータ視写の大きなメリット

小学校3年生国語「ちいちゃんのかげおくり」全文視写を通して

横越町立横越小学校  目黒哲也

1 はじめに
 児童のコンピュータ活用を推進する上で一番大きな障害は「文字入力」である。現在のソフトは画面構成がわかりやすく、マウスを使っての操作だけであれば教師の説明無しでも十分に活用できるものになっている。しかし、保存するときのファイル名入力など、文字入力を避けて通ることはできない。
 児童は1年生の時からコンピュータに触れ、慣れ親しんでいるが、文字入力には相当時間がかかっていた。そのため、理科の温度グラフ作りや算数の棒グラフ作りなど、文字入力自体が中心のねらいではないのに、そのために長い時間と大きな労力を使っていた。教師も文字入力の説明のために、一人一人のところへ飛び回り、同じことを何度も説明する状態であった。
 そこで、児童に文字入力の力をつけさせたいと考えた。昼休みにキーボードゲームなどでやる方法もあるが、全児童に同じようにさせるには、学習時間にやるほうが効果的であると考えた。教科のねらいを達成しながら、文字入力の力もつけさせる方法はないかと考え、この実践を行った。

2 視写のねらい
 国語辞典では、「視写−−−書いてあるものを見てそのとおりに書きうつすこと。」とある。鉛筆を使って書くのではなく、コンピュータのキーボードを打つのであるから、厳密には視写とは言えないであろう。これが今まで私が国語の時間にコンピュータでの視写をためらっていた大きな理由である。しかし、書写の時間ではないので、国語科のねらいが達成できればよいと考えた。

 国語科の視写のねらいは、
@作品の中の巧みな表現(過去形文末表現の中に時折用いられる現在形、体言止め、ダッシュの使用等)に気付き、親しむ。
Aちいちゃんの気持ちを豊かに想像したり、場面の緊張感・臨場感をとらえたりする。
である。
この2つのねらいは、コンピュータでの視写においても十分に達成できると考えた。

 コンピュータリテラシーとしての文字入力に関するねらいは、
@ひらがな50音のキーボードの場所を覚え、慣れ、入力にかかる時間を短くできるようにする。
A漢字に変換する方法はもちろん、カタカナ・英字の入力の方法を覚え、慣れる。
B入力した後でまちがいに気づいたとき、その場所だけ直すことができるという便利さを知る。
である。
この3つのねらいを達成する上でも、教材文「ちいちゃんのかげおくり」は適当な長さの文章であると考えた。

3 学習の様子
 はじめのうちは、予想したとおりなかなか進まなかったが、2時間目、3時間目となるにつれスピードがアップし、教師への質問もほとんど出なくなった。慣れてくるとおもしろくなってくるのか、「今日の国語はコンピュータ視写がいいな。」という声も多く聞かれた。近くの席同士の教え合いも多く見られた。国語の時間を4時間使ったところで半数程度の児童が完成したので、あとのグループは続きを昼休みや放課後に行った。鉛筆を使った視写の場合、あれだけの長文となるとなかなか完成することができないが、コンピュータを使ったおかげで、長文を完成させたという満足感も得られたようである。
 国語科のねらいである表現への注目も、コンピュータ視写を通じて行われた。特にかぎ(「」)への注目は、音読の時より高かった。この文章では会話文が多く出てくるためであると思われるが、かぎを入力するたびに、「これはちいちゃんのお兄ちゃんが言った言葉だよね。」などの声が聞かれた。また、ダッシュ(−)を入力する際のダッシュへの注目や、文末を思いこみで入力してしまい、友達に注意されて直すなど、文末表現や言葉一つ一つに対する注目も高かった。全文を視写したおかげで、読解の学習にも役だった。

4 学習後の変容
 文字入力の抵抗が無くなったため、係活動のメンバーや仕事内容を書く紙をコンピュータで作りたいと言ったり、係が渡す賞状の作成をコンピュータでやりたいと言うなど、進んでコンピュータを使おうとする場面が多くなった。また、他の小学校のホームページを見ているうちに、読んだ感想や質問を電子メールで送りたいという児童もおり、何人かが進んで電子メールを書いた。

5 おわりに
 3年生のこの時期にこの実践をしたことはとてもよかったと実感している。文字入力の初歩段階では、作文をコンピュータで打つことよりもコンピュータ視写の方が効果的である。作文では、文字入力の苦労と文章を作る苦労の両方で、児童が嫌になってしまうからである。1年間のうち1単元で十分である。コンピュータ視写をお勧めする。

6 数年経って
 この実践をしたのは数年前である。このときは「かな入力」で行った。このときの児童は、文字入力に関して卒業まで苦労することなく、総合的な学習の時間(移行期間)をはじめいろいろな場面でコンピュータを活用していた。しかし、4年生でローマ字を学習した後に「ローマ字入力」に変えた児童は、教師のすすめにもかかわらず少数であった。わざわざ変えなくても文字入力をすることができるからである。また、入力に不便がないほどまでにローマ字を完全に覚えるところまでは行かなかったからである。このことが一人一人の将来にどのように影響するのかは、追跡調査をしていないので分からない。
 初歩段階の子どもたちに、「かな入力」で教えるのか「ローマ字入力」で教えるのか、わたしは今でも決めかねている。横越小学校では、3年生からローマ字入力をさせているが・・・・・。